事故物件に住む裏バイトとは、事故物件に住むだけで報酬がもらえる、もしくは家賃を払わずに住めるというものです。
ここでは事故物件に住む裏バイトがあるといわれる背景と心理的瑕疵ガイドラインが策定後の変化についてまとめています。
事故物件に住む裏バイトがあるといわれる根拠
賃貸物件で人が死んだ場合(放置された孤独死や自殺、殺人など)、その物件は事故物件として扱われてしまいます、
事故物件となった物件を貸し出す際には、賃貸希望者に対して「この部屋ではこんなことがありました」という説明義務が生じるため、今までと同等の家賃では借り手が見つからず激安にして貸し出すことになります。
これに対して、不動産業界では告知義務があるのは1人までで、2人めからは告知義務がなくなるということが通例でした。
※実際の裁判で「告知しなければいけない入居者は1人目まで」という判決があったことも根拠となっています。
そのため事故物件に一定期間人を住まわせてることで、次の借り主に対しては告知義務が免れるとされていました。
つまり、事故物件に人を住まわせることで次の借り主には告知をせず、通常の家賃で貸し出すという手法が使われていたというのです。これは事故物件のロンダリングともいわれています。
事故物件になった直後の最初の住人になってもらうことで事故物件としての汚名は払拭されるわけですから、アルバイトを雇いたくなるのは当然。ということが根拠となって生まれたのが事故物件の裏バイトというわけです。
ただし、公に募集できるような内容ではないためあくまでも裏バイト。都市伝説や噂の域を越えるものではありません。
国交省がガイドライン案を制定した背景
事故物件に住む裏バイトが存在するという噂の背景には、人の死に関する告知義務に関する明確な基準がなかったことに原因があります。
他殺や自殺などが過去にあった事故物件は人に嫌な印象を与えることから、心理的瑕疵がある物件とされ、心理的瑕疵の有無は賃貸契約を結ぶ際の判断基準として重要なポイントとなることから事前にその事実を告知しなければなりません。
しかし、これまでは心理的瑕疵告知の根拠が「宅地建物取引業法第47条」にしかありませんでした。
そこでは「告知すべき事故の範囲」や「どのくらいの期間告知しなければならないか」については明確になっていなかったため不動産会社の解釈の仕方によって告知義務や方法についてバラバラだったのです。
そこから事故直後に短期間誰かを住まわせることで、次の人には告知せずに貸し出しても良いという暗黙のルールが生まれてしまったというわけですね。
しかし、2021年10月8日、国土交通省により「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が打ち出され、曖昧だった事故物件の告知すべき死亡の状況と告知を継続する期間が明確になりました
ガイドラインにより人の死に関する告知義務が明確になった
1.自然死(老衰、病死など)は告知義務なし
自然死(老衰や持病による病死)は心理的瑕疵に該当しないため告知義務がないと明記されています。また、自然死には不慮の事故(階段からの転落・転倒・風呂場での溺死など)も含まれます。
2.告知義務が生じる自然死
自然死や不慮の事故であっても発見が遅れ、遺体の損傷が理由で特殊清掃が行われた場合は告知義務が生じることになります。
遺体放置により臭いや虫が発生した場合は、特殊清掃やリフォームが行われたとしても契約者にとっては判断に重要な影響を与えるものと考えられるからです。
3.告知義務がある人の死
殺人や自殺、事故死、死因があきらかでない場合等は、従来の判断と同様に心理的瑕疵に該当するとして告知義務が生じます。
また、アパートや集合住宅の場合、ベランダ、共用玄関、エレベーター、階段、廊下などで起こった自殺や殺人も告知対象となります。
4.事故物件の告知義務は「概ね3年間」
今回のガイドライン案では、事故の告知義務の期間が概ね3年と明記されています。
ただし、これは賃貸物件の告知期間です。
売買する際は告知義務の時効はなく、更地にしても建て直しをしても売却する際は告知しなければなりません。
5.告知義務が3年以上になる場合もある
ニュースとして取り上げられた事件の現場や、近隣の住民の記憶に深く残っている事件の現場などは告知義務が3年以上になることもあります。
また、借り主から問い合わせを受けた場合は伝える義務があります。
結論|事故物件に住む裏バイトは成立しない
2021年10月に、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定され、事故物件の告知義務はおおむね3年であると決められました。
事故物件になった直後に誰かを住まわせたとしても、3年を過ぎていなければ次の人に告知の義務があるということになるわけです。
これにより、事故物件に住む裏バイト(事故物件のロンダリングバイト)は成立しないということになりました。